必ずしも今すぐ田舎に帰るのが“最良”とは限らないかも
「田舎に帰るべきか?帰らざるべきか?」
今そんなふうに悩んでいる方はたくさんいらっしゃるでしょうね。
Uターン後50代になってから事故や病気でだいぶ人生の予定が狂った私にしてみれば
会社を定年退職してから最近田舎に帰ってきた先輩がうらやましく思えます。
「何が?」って、退職金や年金など潤沢な老後資金があるので、田舎暮らしにおいてお金に困ることはなさそうですからね。
実家の家業の跡取りがいないから
親が一人暮らししてて心配だから
色々理由はあると思いますが、だからと言って今すぐに田舎に帰ることが必ずしも良いこととは思いません。
ここではわたしの経験と知見で今すぐに田舎に帰るべきではないことをお話ししたいと思います。
親の“年金”のために田舎に帰ってきた
なぜ私が31歳で田舎に帰ってきたのか?というと
それは親の病気や年金が関係しています。
専業農家だった両親は国民年金の他に老後のために農業者年金もかけていました。
しかし当時の農業者年金は農家に後継者がいないと支給されない仕組みでした。
そのことによって子である私は大変な影響を受けました。
私はもちろんですが両親にしてみても私がいないと年金がもらえないので大変な問題です。
「帰ってきてくれ」
当時建設現場の作業員をしていた独身の私に
「嫌だ」
と、言えるほどの明確な理由は何もなかったので帰ってきました。
今の仕事続けた方がいい
ちょっと早いけどこれ、結論です(笑)
今、“正社員”という立場でそれなりに収入があり、親が一人で生活できる、または親のどちらかが介護の手がかかるとしても何とかなるなら
安易に田舎に帰るのは止めて、田舎に帰る以外の方法を探るべきでしょう。
今50代になって周りの人たちを見ててわかったことですが
介護施設のお世話になるにしてもお金が、住んでいる家にもお金が
なにかにお金がかかるものです。
今丸腰で親のそばに行くよりも、今いる場所からお金の援助をした方が親を守れると思います。仮に田舎に帰っても、そこで前職と同じような条件での再就職ってなかなか難しい。
私は親のために田舎に帰ってきたつもりでしたが、経済的にしっかりしていなかったために不本意にも何度か親に散財させてしまいました。
その後のケガや病気、事故の影響などもあり、未だに不安定な暮らしですし
今となっては自分の老後さえも心配になってきました。親にしてみれば
「自分たちが呼び寄せてしまったばかりに息子の人生を狂わせてしまった」
と思わせてしまっているようです。でも、私がしっかり就職していれば田舎に帰ってこなかったかもしれませんし
田舎に帰ってきてもちゃんとした会社に就職していれば親を守りつつ自分の人生もしっかり歩けていたかもしれません。
定年後親と同居
自分が定年になるまで親に我慢してもらって、定年後に同居。
そういう選択肢も当然ありだと思います。
妻や子供が実家で親との同居を拒否するなら、一家で親と同居する必要もないでしょう。
若い時は「親はお嫁さんとかわいい孫と一緒に楽しく暮らしたいんだろう」とかたくなに思っていましたが
年老いた親は嫁や孫と楽しく暮らしたいわけではなく(そういう気持ちも少しはあるでしょうけども)
年寄りだけ、または一人が心細いんだと思います。
子供が学校を卒業して社会人になったら嫁とは関係なく
自分だけ親と同居
という選択肢もありだと思います。
会社に人生を振り回されたが・・・
私の2歳年上の先輩は大手企業に就職後すぐ、不景気によるリストラの対象になり
とても遠い他県への転勤を命ぜられました(体のいいクビ宣告ですよね。「行くわけないよね」っていう)
でも先輩は行きました。彼の地へ。
転勤が原因で離婚し、現地で再婚。
あまりにも実家と遠いので数年に一度程度しか郷里の土を踏めなかったようです。
農家の長男でしたが年老いた両親にはなかなか会えずにいるうちに
お父さんはガンで他界しました。が、死に目にも会えず葬儀にも出席することもできませんでした(コロナ禍でしたので)
で、一人暮らししていたお母さんもお父さんと同じ病気になった。
もういたたまれない気持ちだったと思います。定年になってすぐに、再婚した女性と二人で田舎に戻ってきました。
大企業を定年まで勤めあげていますから、退職金や年金によるその後の暮らしも余裕でしょう。そこの年老いたお母さんも
「今までは他所の家の嬉しい話を聞くばかりだったので本当にうれしい」
って言ってたそうです。
こいうのも会社員を勤め上げればこそ、お金があればこそ!
ですよね。
なのになぜ私は戻ってきたのか?
父親がパーキンソン病という不治の病にかかってしまい家業の農業を継続できないうえに
後継者がいないと長い間積み立ててきた農業者年金がもらえそうになかった!
ということで私に声をかけたようでしたが、もう一つ親心として
30歳になるというのに独身で建設作業員という不安定な仕事をしているので親が私を心配してそばに置いておきたくて私に声をかけたようです。
とはいえ私は勤務先では盛んに仕事を楽しみながら働いていましたし、当時の収入は同年代のサラリーマンと比較しても少なくはなかったですし
友人も多く充実した生活だったので田舎に帰るべきかどうかかなり悩みました。本音を言えば帰りたくはなかったのですが
「あれこれ考えてもしょうがない。とにかくそこに行って暮らしてみなきゃ何もわからないだろ」
と、半ば強引に“ちからわざ”で、帰ってきてしまいました。でも今思えば
前述のように親に「帰ってきてくれ」って言われて安易に田舎に帰るのではなく、帰った先での就業を決めてから帰るべきだったと少し後悔しています。
田舎に帰ってこなくてもよかった?
田舎に帰ってきてからからほどなく農業者年金は
実子でなくても名義上の引き受け手がいれば受給できるようになり
父が罹ったパーキンソン病は急激に動けなくなるような病気ではなく、病気が発覚してから10年ほどは介助なしで生活できましたし
地元に営農組合ができて我が家の田畑も小作してもらえるようになりました。つまり
私がいなくても大丈夫な環境になっていました。
何の冗談なんでしょうね?
あんなに悩んで、決意して、使命感だけで田舎の実家にやってきて・・・
ま、それはそれとして(笑)やはり、どんな状況でも大切なのは
急がないで、仕事中心に考える事だと思いました(笑:笑うしかない)
世の中は変わる
私の場合は特に顕著だったと思いますが(苦笑)
田舎に帰る理由だった農業、パーキンソン病、年金、という懸案も
「私が帰ってくる必要などなかった」
と思わせるほど数年のうちに世の中が変化したと感じました。
農業者年金が“子がいない”という理由で支給されないなんて問題あり過ぎて、訴えられそうですし
昔はパーキンソン病は気持ち悪がられていたようですが、今では患者数が増えてきてテレビなどでも取り上げられる機会も多く
治癒こそしませんが対応策などの情報が個人でも手に入れやすくなってますし
農業に関しては個人ではなく法人が請け負って行うのが主流になってきました。
両親に数年頑張ってもらっていれば、僕が田舎に来る必要はなかったかもしれません。
田舎に帰るより仕事
結局田舎に帰るよりもしっかり仕事を選んだ方が人生上の困難を乗り越えるための
杖
になると思います。もちろんその人の事情にもよりますが。
僕の実家の場合は、年金と、病気と、田畑の今後を考えた時に
息子を呼ぶことで一挙に解決できると考えたのでしょう。もしかしたら僕のためにさえなると思って。
でも今ならわかる。親のためを思うのなら
しっかりとした会社で正社員として働くべきだと。
それが何より自分のためにもなるしね。
大企業の下っ端にいるよりも、小さいながらも一国一城の主になった方が素晴らしい
などと言う人もいましたが、そんなことは無いと思います(なれれば素晴らしいですが、なかなかなれない)
やはり世の中、大企業の一員でいることのメリットは計り知れません。
大企業が無理でも派遣や契約社員、臨時職員、フルタイムのアルバイトなどではなく
正社員
として働くようにしましょう。それが結局は
身を助けるのです。
こんなの昔から親世代から言われていることですが
そんな簡単で当たり前の事実に今ごろ気が付いたsikujiriでした。